研究内容
携帯電話のテレビ電話機能とハンズフリー対話機能を用いれば,人の顔を見ながら話をすることができるが,それはあくまでテレビ会議であり,その携帯電話そのものを対話相手と見なすことはできない.本研究ではこの携帯電話に人間らしい姿形を与えることにより,携帯電話が対話相手その者に感じられ,万人が容易に利用できる,人間調和型の新しい情報メディアを実現する.
研究代表者(石黒)は世界に先駆けて遠隔操作型アンドロイド「ジェミノイド」の研究開発に従事してきた.この研究における重要な発見は,ジェミノイドを遠隔操作する操作者とジェミノイドと対面する訪問者の双方が,ジェミノイドを操作者本人と感じることができるようになることと,ジェミノイドのモデル以外の者が操作しても,その者はアンドロイドを自らの体のように感じることである.
本研究では,このジェミノイドを携帯電話サイズに小型化することで,何時でも何処でも人間の存在を伝達することができる通信手段「ジェミノイド携帯」を実現する.ジェミノイド携帯によって,ユーザは遠隔地に自らの存在を送り,遠隔地にいる対話相手はユーザの存在を目の前に感じながら対話できる.このジェミノイド携帯は,パソコンや携帯電話に続いて社会を変革する新しい情報メディアとなる可能性がある.
ジェミノイド携帯のデザインは,これまでの研究で考察してきた人間としての必要最低限の見かけと動きの要素だけからなる,ジェミノイドのミニマルデザインを採用する.このデザインは一目で人間であると認識できる最低限の見かけを持つとともに,男性とも女性とも,高齢者とも幼児とも判別できない見かけになっている.すでに行った予備的実験では,多くの者が知り合いの顔を容易に想像できることが分かっている.また,この模型の試作では,人間の皮膚のような柔らかい素材を用いており,その触感からも人間を連想させるようになっている.
本研究ではこのジェミノイド携帯の動作機能,センシング機能,デザインを,認知心理学的実験を通して開発しながら,最終的には社会実験によって,人間調和型の新しい情報通信メディアとしての可能性を探究する.
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