アートへの挑戦
アンドロイドの研究は,ロボティクスの分野だけではその本質を掴むことができません.GeminoidやTelenoidは人と関わることを目的としたロボットであるため,他者との関わり合いの中にしか存在し得ないからです.アンドロイドを用いた研究とはそもそも人はなぜ存在していると言えるのかといった,哲学的な問いに答えることと似ています.この様な問いに立ち向かうためには,工学や科学だけでなく,哲学やアートなどの分野からの視点が必要不可欠であると考えています.また逆に,これまで哲学者やアーティストしか扱うことができなかった問題が,アンドロイドにより工学者や科学者にも取り扱うことができるようになる可能性があります.
現在我々は様々なアーティストや哲学者とのコラボレーションを進めています.例えば,舞台演出家である平田オリザさんの協力の元,世界で初めてアンドロイドを用いた演劇「さよなら」を上演しました.
舞台芸術の世界では,Geminoid Fは本物の人になることができる可能性があります.なぜなら,人もアンドロイド同様,演出家の完全なコントロール下に置かれるからです.演出家によりコントロールされた「さよなら」は,人とアンドロイドの区別が無くなり,アンドロイドが血肉を持った人になりうることを予感させます.